「使っていない」のには、現場なりの理由があります
「この食器、せっかく良いものだから使いたいんです。」
以前、飲食店の現場改善で伺った店舗で、オーナー様からそんなお話を聞いたことがあります。
倉庫には、有田焼などの良い食器がたくさんありました。
オーナー様としては、せっかく持っている良い食器です。
「この器を生かした盛り付けにしたい」そう考えるのは、自然なことだと思います。
ところが、現場では、その食器がほとんど使われていませんでした。
なぜでしょうか・・・
食器そのものが悪いわけではありません。
現場にとっては、「使いにくい」理由があったのです。

現場がその食器を使わない理由
一つは、重さでした・・・配膳するときに重い。
一枚なら気にならなくても、何枚も持って運ぶとなれば、スタッフの負担になります。
もう一つは、洗い物です。
食洗機を使う際、食器を入れたケースを出し入れする作業があります。
その食器は重いため、ケースの出し入れそのものが大変でした。
オーナー様から見ると、「良い食器だから使いたい。」
現場から見ると、「使うと作業が大変になる。」
どちらも間違っているわけではありません。
ここが、飲食店の整理で難しいところです。

「良いもの」だから「必要なもの」とは限らない
整理というと、
「古いものを捨てる」「使っていないものを処分する」というイメージを持たれがちです。
でも、実際の現場では、もっと複雑です。
高価なもの、思い入れのあるもの、いつか使うかもしれないもの。
せっかく買ったもの。
こうしたものは、簡単には処分できません。
今回の食器も、まさにそうでした。
「使っていないから不要」と簡単に判断できるものではありません。
だからこそ、整理では「捨てる・捨てない」だけを考えるのではなく、「この店にとって、本当に必要なものなのか?」を考える必要があります。

「使わない」のには理由がある
ここで大切なのが、「なぜ使っていないのか?」を見ることです。
使わないからといって、スタッフの片づけ方が悪いとは限りません。
「使いたくない」のではなく、「使うと仕事がしにくい」という場合があります。
今回の食器も、
・配膳すると重い
・食洗機ケースの出し入れが大変
・日々のオペレーションに負担がかかる
という、現場側の明確な理由がありました。
つまり、問題は「食器が使われていないこと」ではありません。
「オーナー様が生かしたい食器」と「現場が使いやすい食器」の間に、ズレがあったことです。

現場と管理者、どちらの意見が正しいのか?
こういう場合、「現場が使わないなら捨てればいい」でもありません。
「オーナーが使いたいなら、使えばいい」でもありません。
大切なのは、双方の理由を確認することです。
オーナー様は、なぜ残したいのか。
現場は、なぜ使いたくないのか。
そこを確認して初めて、次の判断ができます。
例えば、
「特別なコース料理のときだけ使う」
「季節メニューの盛り付けに限定する」
「通常営業では使わない」
など、使い方を見直す方法もあります。
必要なのは、「残すか捨てるか」の二択ではありません。
そのモノをどう位置づけるのかを決めることです。
「いつか使う」が厨房をいっぱいにする
飲食店の厨房には、こうした「使われていないけれど、捨てられないもの」がたくさんあります。
「いつか使うかもしれない」
「せっかく買ったから」
「高かったから」
「まだ使えるから」
その一つひとつには、それぞれ理由があります。
だから、簡単には捨てられません。
しかし、それが積み重なると、「使うもの」と「使わないもの」が混在した厨房になってしまいます。
必要なものを探す。
使わないものをよける。
収納場所が足りなくなる。
さらに新しい収納場所を作る。
そして、またモノが増える。
こんな状態になってしまいます。

整理は「捨てる」より先に「理由を確認する」
だから私は、現場改善でいきなり、「これは捨てましょう」とは言いません。
まず、「なぜ使っていないのか?」を確認します。
そして、
「誰にとって必要なのか?」
「何のために残しているのか?」
「本当に使う予定があるのか?」
「使うなら、いつ、どのように使うのか?」
を整理していきます。
ここを曖昧にしたまま「とりあえず残す」と、また同じことが起こります。
現場が不要だと思っているものを、管理者が「いつか使う」と言って残す。
その状態が続けば、厨房の中には「使われないもの」が増えていきます。
だからこそ、現場と管理者が一緒に話し合い、納得できる判断基準をつくることが大切なのです。
👍 飲食店の改善のコツ
「使っていないから、捨てる」その前に、「なぜ使っていないのか?」を聞いてみてください。
使わない理由が、
「重い」
「取り出しにくい」
「戻しにくい」
「洗浄しにくい」
「使う場所から遠い」
など、現場の作業上の問題であることがあります。
その理由が分かれば、捨てる以外の改善方法が見つかるかもしれません。
逆に、理由を確認しても使う目的や予定がないのであれば、「いつか使う」という判断そのものを見直す必要があります。
整理のスタートは、「捨てる」ではありません。
「なぜ、これはここにあるのか?」
そこから始めてみてください。
飲食店の現場改善術では、5S・環境整備・HACCP・人材育成をテーマに、現場ですぐに実践できる改善のヒントをお届けしています。
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【筆者紹介】
徳王 美紀(とくおう みき)
飲食店専門 現場改善コンサルタント
飲食店を中心に、HACCP・5S・環境整備・従業員教育を通して、働きやすく、生産性と品質の向上につながる現場改善を支援しています。


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