閉店する飲食店の片付けをお手伝いしたときのことです。
冷蔵庫や冷凍庫を開けて、私は驚きました。
想像以上の食材が残っていたのです。
その時、経営者の方が静かに話してくださいました。
「何度も現場には伝えてきたんです。でも、結局は任せるしかなくて……。」
その一言が、とても印象に残っています。
なぜ、そうなってしまったのか
それぞれの担当者が発注し、それぞれが使い、それぞれが管理していました。
冷蔵庫や冷凍庫がいっぱいになるたびに、「容量が足りない」という声が上がり、その都度、新しい冷蔵庫や冷凍庫を増やしてきました。
しかし、増えたのは収納スペースではなく、管理する場所でした。
誰が何を発注し、どれだけ在庫があるのか。
全体を把握できる仕組みがないまま、気がつけば誰も正確な在庫を把握できない状態になっていたのです。
整理収納アドバイザーとして感じたこと
整理収納アドバイザーとして、私がいつもお伝えしていることがあります。
収納を増やせば、モノは増えます。
収納場所ができると、人はそこを埋めたくなります。
そして、管理できる量を超えた瞬間から、モノは「資産」ではなく「管理できない在庫」へと変わってしまいます。
今回、あふれていたのは収納用品ではありません。
食材でした。
閉店時に大量の食材が残っていた光景を見て、「収納を増やすだけでは問題は解決しない。」ということを改めて実感しました。
管理できないままモノを増やせば、さらに管理は難しくなります。
その結果、作業スペースは狭くなり、必要な物が探せず、在庫も把握できなくなってしまいます。
これは家庭で例えるなら、モノが増え続けて片付けられなくなった「汚部屋」と同じ状態です。
飲食店では、その対象が「食材」だったのです。
お店を見ると、仕組みが見えてきます
私は、お店に入るとまず厨房やカウンターを見ます。
そこには、そのお店の管理の仕組みが表れているからです。
モノの置き方だけではありません。
どこまで情報が共有されているのか。
誰でも同じように管理できる仕組みになっているのか。
そうしたことが、現場を見ると自然と伝わってきます。
私自身も感じていたこと
整理収納改善で関わる中で、私は以前から在庫管理には課題があると感じていました。
整理整頓や配置の改善、管理方法のご提案は行い、経営者の方も改善に取り組まれていました。
しかし、私が担当していたのは整理収納や現場改善であり、店舗全体の在庫数量の管理や発注ルールの構築・運用までを担う立場ではありませんでした。
だからこそ、閉店時の光景を見たとき、「見える化」と「共有できる仕組み」まで一緒に構築できていたら、結果は違っていたかもしれない。
そんな思いが今でも残っています。
一方で、同じ会社では成果もありました
実は、この会社では良い結果もありました。
通販部門では、冷蔵庫や冷凍庫を整理し、保管方法や管理方法を見直したことで、同じスペースで保管できる商品量が大きく増えました。
製造・販売できる数量も増え、月商アップにもつながりました。
つまり、問題だったのは冷蔵庫の大きさではありません。
仕事の仕組みだったのです。
まとめ
整理収納は、物を片付けることが目的ではありません。
収納用品を増やすことでもありません。
誰でも管理できる仕組みをつくり、情報を共有し、改善を続けられる現場をつくること。
それが、本当の整理収納であり、現場改善です。
冷蔵庫が足りなかったのではありません。
仕事の仕組みが足りなかったのです。
人が育つ現場には、理由がある。改善が続く現場には、仕組みがある。
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【筆者紹介】
徳王 美紀(とくおう みき)
飲食店専門 現場改善コンサルタント
飲食店を中心に、HACCP・5S・環境整備・従業員教育を通して、働きやすく、生産性と品質の向上につながる現場改善を支援しています。

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